タイ地域医療保健研修
このGMSニュースレターは、特定非営利活動法人グローカルメディカルサポートの会員およびマヒドン大学熱帯医学短期研修にお申込みいただいた方に配信しております。
HIV陽性の結核患者に対する迅速尿検査
アフリカ (multicenter double-blind RCT)

世界全体でHIV患者の結核感染は、依然として主要な死亡原因で、2016年には約374000人の死者がいると推測される。多くのSub-Saharan Africaでは、最も多い入院原因はHIVおよび結核である。

結核の診断に際して満足する検査がないことが、悪い結果に結びついている。結核は播種することがあるが、非特異的な臨床症状を示すため、実際の症例の半数でしか診断できていないという報告もある。抗酸菌の培養は時間がかかり、検査する設備が必要となる。アフリカでは、培養およびレントゲンをとることができないことがある。痰の核酸検査(Xpert MTB/RIF)は迅速だが、HIV患者の結核の場合、痰からの菌の排出が少ないこともある。尿は入院患者では簡便にとれて検査に適している。尿のLAM (lipoarabinomannan) を使用し結核の診断をする取り組みが進んでいる。播種性結核の場合、腎も感染していることが多く、痰の検査の補助診断として用いられる。
現在使用されるLAM抗原キットは、CD4の値が10 cells perμLのHIV患者の結核感染において40-70%の感度および98%の特異度を示した。HIV罹患者が多い地域において痰のXpert(核酸検査)に加えて、尿のLAM抗原を調べることでHIV患者の結核感染の80%を診断できたという報告がある。

著者らは、入院するHIVの結核患者に対して、痰に加えて尿LAM抗原検査の有効性および治療成績を評価した。マラウィおよび南アフリカにおいてmulticenter, double-blind RCTを施行した。18歳以上のHIV患者で、これまで結核の治療を行っていない患者を対象とした。コンピューターでランダム化を行い、Standard-care group群は、痰のXpert MTB/RF検査のみ、Intervention群は痰の検査に加え尿のLAM抗原検査を行った。Primary outcomeとしては56日の死亡率とした。Oct 26, 2015から Sept 19, 2017の間、4788名のHIV患者のうち2600名が1300名ずつランダムにStandard-care-group群とIntervention群に割り当てられた。そのうち2574名に対してIntention-to-treat analysisを行った。1864名がHIVの治療を行っており、Median CD4 countは227 cells per µLで、56日での死亡率はstandard-care-groupで21% (272/1287)、Intervention群で18%(235/1287)であった。(adjusted risk reduction [aRD] –2·8%, 95% CI –5·8 to 0·3; p=0·074)。CD countが100 cells per μL以下の群においてはIntervetion群の死亡率はstandard-care groupに比べ有意に低下していた (aRD –7·1%, 95% CI –13·7 to –0·4; p=0.036)。尿検査による結核の診断はリスクが高いHIV患者の結核感染において死亡率を低下させる可能性がある。
写真出典:Wikimedia Commons

Lancet 2018; 392: 292–301

#非常に印象的な研究でした。尿検査のバックグラウンドを含め、詳細に翻訳しました。アフリカではないと成り立たない研究だと思います。アフリカではHIV,結核の共感染のみならず、播種を起こしても結核が診断できない現状があります。その理由は痰の培養、レントゲン検査ができないためとのこと。スタンダードな痰の抗酸菌染色、培養、XPを行なわず、痰の核酸検査、尿の抗原迅速検査を使用して予後の改善につなげるのもアンバランスな印象はあります。しかも尿の抗原検査は播種性結核でないとなかなか陽性にならないことから、アフリカでないとこの研究はなりたたないものの。。。。読んでいて複雑な気持ちです。フリーでダウロードできるのでぜひ読んでみてください。

GMS会員】eラーニング
マヒドン大学熱帯医学短期研修の講義を中心に、熱帯医学、渡航医学、感染症に関する動画や、マラリアや消化管寄生虫クイズなど、わかりやすい教材で効率的に学習できます!以下、eラーニングの一部です。
※GMSeラーニングは、会員限定のコンテンツです。

1)マラリア鑑別のポイント
2)消化管寄生虫症 鑑別
3)マヒドン大学熱帯医学部コース説明 等

サンプル映像は、2017年マヒドン大学熱帯医学短期研修
「消化管寄生虫症概論」Prof.Yaowalarkです。

GMSe-ラーニングでは、マラリアや消化管寄生虫など、顕微鏡での特徴をクイズ形式で解説いたします。典型例を分かりやすく原虫別に出題していきます。これらの画像は、「マヒドン大学熱帯医学部出版(英語)の寄生虫アトラス」から抜粋したものと、実際の顕微鏡の画像を混在して入れています。実臨床では教科書画像のように分かりやすい画像とは限らないので、注意が必要です。
※GMS会員登録で、マヒドン大学熱帯医学部出版(英語)の寄生虫アトラス(Atlas of Medical Parasitology)が500円引になります。

タイ地域医療保健研修
特定非営利活動法人グローカルメディカルサポート(NPO法人GMS)
地域医療の携わる新しい医療従事者のロールモデルを作ると共に、日本国内の地域医療を担う医療従事者の確保と、地域医療・へき地医療の質の向上に取り組んでいます。
ホームページはこちら
タイ地域医療保健研修
マヒドン大学
熱帯医学短期研修
マヒドン大学は熱帯医学領域ではアジアのリーダーとして教育に力を入れています。マヒドン大学熱帯医学短期研修は、講義、ワークショップは大学の第一線の臨床医、研究者が担当し、実際のベッドサイドラウンド、顕微鏡を使った消化管寄生虫、マラリア診断など実践的な研修です。
ホームページはこちら
タイ地域医療保健研修
とちノきネットワーク
途上国および日本の地域医療、保健、研究に携わる医療従事者を支援するネットワークです。人が集まり、繋がり、情報交換をすることで、若い医療従事者の教育、キャリアを支援します。ホームページでは主に、海外、日本の地域でのセミナー、就職、留学情報を多く提供しています。
ホームページはこちら

タイ地域医療保健研修
ATLAS OF MEDICAL PARASITOLOGY
医療分野や医療分野の専門家は、世界の重要な寄生虫をカバーしています。原生動物、線虫、爬虫類、爬虫類、節足動物、節足動物の各データベースには、形態学、生活環、地理的分布、症状、予防などの情報が含まれています。
※会員登録で500円引き
ニュースレター
購読申し込み

今、話題になっている世界の熱帯医学、渡航医学、感染症のトピックスをピックアップしてお届けします!
GMSの会員登録は
こちら
GMSの活動を継続的に支えてくださる方を必要としています。GMSの会員得点として、熱帯医学、渡航医学、感染症に関する動画を使用したeラーニングを公開しています。
メールが正しく表示されない場合は こちらWebページ版をクリック
このニュースレターは、特定非営利活動法人グローカルメディカルサポートの会員およびマヒドン大学熱帯医学短期研修にお申込みいただいた方に配信しております。今後も引き続きメールの受信を希望される方は こちらをクリック してください。 今後メールの受信をご希望されない方は、こちらから 購読停止手続きが行えます
本メールは info@npo-gms.org よりinfo@npo-gms.org 宛に送信しております。
Iwamoto-cho, Chiyoda-ku, TOKYO 101-0032, JAPAN


全てのメーリングリストから配信を停止する。 配信停止 | 登録情報更新 | このメールを転送する | 迷惑メールと報告する